税理士法人 吉田会計


吉田会計ブログ > 寄付と税金(相続税・贈与税)

寄付と税金(相続税・贈与税)

 今回の寄付と税金に関する話は、いよいよ最後の相続税・贈与税の話となります。
 相続税の場合、「宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によってもらった財産で公益を目的とする事業に使われることが確実なもの」については相続税がかからない財産となります(相続税法12条③)が、この規定とは別に、相続または遺贈によってもらった財産を、国や、地方公共団体又は特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人などに寄附した場合には、その寄附をした財産は相続税の対象としない特例(租税措置法70条)があります。


 この特例を受けるには,
① 寄附した財産は、相続や遺贈によってもらった財産であること
  (相続や遺贈でもらったとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます)
② 相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること
③ 寄附した先が国や地方公共団体又は教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる 特定の公益を目的とする事業を行う特定の法人(以下「公益法人」といいます。)であること
 (特定の公益法人の範囲は独立行政法人や社会福祉法人などに限定されており、寄附の時点で既  に設立されているものでなければなりません)
の3つの要件に当てはまることが必要です。
 また、相続や遺贈によってもらった金銭を特定の公益信託の信託財産とするために支出をした場合には、その支出した金銭は相続税の対象としない特例があります。
 この特例を受けるためには、
① 支出した金銭は相続や遺贈でもらったものであること
② その金銭を相続税の申告書の提出期限までに支出すること
③ その公益信託が教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる一定のものであること
の3つの要件に当てはまることが必要です。
 ただし、上記の特例については、以下の点に注意してください。
①寄附を受けた日から2年を経過した日までに特定の公益法人又は特定の公益信託に該当しなくなったときや特定の公益法人がその財産を公益を目的とする事業の用に使っていないときはこの特例が受けられなくなります。
②寄附又は支出した人あるいは寄附又は支出した人の親族などの相続税又は贈与税の負担が結果的に不当に減少することにならないことです。例えば、財産を寄附した人又は寄附した人の親族などが、寄附を受けた特定の公益法人などを利用して特別の利益を受けていないことなどをいいます。
③相続税の申告書を提出するときに寄附又は支出した財産の明細書や一定の証明書類を付けることです。相続税の申告書の第14表が寄附又は支出した財産の明細書になっています。
 相続税に対して贈与税の場合は、「宗教、慈善、学術その他公益を目的とする事業を行う者で政令で定めるものが贈与により取得した財産で当該公益を目的とする事業の用に供することが確実なもの」については贈与税を課さないこととしています(相続税法20条の3③)ので、贈与された人が相続税法20条の3③の要件に該当する場合は贈与税がかからないのですが、そうでない場合は、特に特例措置がないので、贈与財産を寄付しても贈与税は免除されないと考えられるのでご注意ください。
 贈与税で租税措置法70条のような規定がないのは、相続と違い、贈与の場合は相手が生きているので断ることや直接相続税法20条の3③の要件に該当する者に贈与してもらうこともできるからではないかと思います。
 以上、数回にわたって、寄付と税金についてお話しさせていただきました。これまで読んでくださった方、もしいらしゃるとしたら、どうもありがとうございました。

寄付と税金(相続税・贈与税) はコメントを受け付けていません

カテゴリー:伊藤

コメントは受け付けていません。